2022年9月
愛宕山ケーブルカー跡地
戦争に供出
今回紹介するのは、福岡市西区愛宕にある「愛宕山ケーブルカー跡地」です。鷲尾愛宕神社参拝客のために昭和3年、愛宕下から鷲尾愛宕神社の南南東170m、音次郎稲荷神社の小山の頂上まで、全長131mのロープウェイが建設されました。
旅客営業ロープウェイとしては日本で2番目、九州では初となる物珍しさもあって、当時はたいそう賑わったとのことです。戦争の足音が大きくなるにつれ、従業員(男性)が次々と徴兵され、車体も鉄材として供出せざるを得ず、強制的に持っていかれ戦争の犠牲となり、昭和18年にわずか15年で姿を消してしまいました。今では小山の頂上にある駅の遺構(コンクリート土台)が木々に埋もれて名残をとどめるだけになっています。平和であれば続いたであろうこの遺構は「戦争遺構」という意味でも残すべき貴重な存在です。「愛宕の森と緑を守る会」の方たちが行っている調査で、平成29年にその全体像が明らかになりました。奥行が約20m弱、幅が9m弱、奥の方では18m程度にもなる広い遺構だと判明しました。
「私が育った町である姪浜地域でも、このような戦争遺構が存在することをあらためて発見できました。孫たちのためにも、戦争は二度と起こしてはならないという思いを深くしました」と語るのは江口謙二執行委員長です。
供出:戦時体制下で,法律により食糧・物資などを政府が民間に一定価格で半強制的に売り渡させること
2022年9月